先進国で最低水準の日本の断熱性能

1970年代までは、日本の家も欧米の家もどちらもほぼ「無断熱」に近い建物でした。当時欧米の家で1年間に使う暖房・給湯エネルギー量は灯油換算で1㎡当たり20l(リットル)くらいでした。ところがオイルショックが起こり欧米はどんどん家の断熱化が進み、今では日本とは桁違いの断熱性能を有するまでになりました。1985年には、16l/㎡まで省エネ化が進み、88年には12l /㎡が義務化されたのです。2001年には9l /㎡、2009年には6l /㎡、再成エネルギー活用(太陽光・風力発電等)で実質4.8l /㎡まで性能値が厳しく設定されてきました。

東京圏における現在の最も進んだ省エネ基準は、認定低炭素住宅や長期優良住宅、ZEH等の外皮(断熱等)基準をクリアすることが求められる平成28年基準です。この基準があたかも最高性能であるかのようにハウスメーカー等では宣伝されていますが、実はこの基準をクリアする建物でも、30年以上前の欧米の1985年基準さえクリアできません。

他の先進国の方たちに言わせれば、「日本の家は断熱性能も低く、寒すぎる!」のです。

今や交通事故死者数を上回る浴室内での溺死事故

この20年間、家庭内での不慮の事故死が増え続け、高齢者の浴室での溺死事故にいたっては交通事故死者の約3倍も発生しているそうです。なぜこうした事故が増えているのか? ひとつの要因として考えられるのが「家の寒さ」です。高齢者が増え続けるなか、住宅の断熱性能は一向に上がっておらず、他の先進国に比べると笑われてしまうぐらいの日本の省エネルギー基準でさえ、それを満たしている住宅は全国でもわずか5%しかないのです。

日本人の死因の第1位はガンですが、高齢者においては、脳梗塞と心筋梗塞がガンの死亡者数を上回ります。これらの疾患は、家の寒さ、特に暖房の効いた居間から寒い浴室へ移動して裸になったり、夜中に暖かい布団の中から寒いトイレへ行ったりするなど住宅内での急激な温度差が引き金となることが少なくありません。

また、夏の住宅内での熱中症においても、発症者は高齢者に多く、こちらは家の暑さが要因となります。断熱性能が低い家は、最悪の場合、死に至るほどの健康リスクがあります。

実はこの危険性は、なにも高齢者に限ったことではありません。冬の冷たい空気が、私たちの肺に与える影響はとても大きい。家の断熱性をアップしたことで、年齢を問わず肺疾患が改善し、風邪をひきにくくなり、お子さんが学校を欠席したり、お父さんやお母さんが会社をお休みすることが減少したというニュージーランドの研究データもあるほどです。

世界に比べて日本の「住まいの断熱」に対する考え方は、ユーザーの意識も、基準や法制度もかなり遅れているのが実情です。家族の健康を守るためにも、住まいにおける健康リスクと、断熱性を高めることの大切さをご紹介します。

お医者さんや大学教授も薦める「暖かく涼しい家」

高齢者はヒートショックに注意!

家の寒さや温度差は血圧に影響します。

上のグラフは家庭内事故死者の年齢分布と死因の内訳。死亡者は高齢者に集中し、入浴事故が死因第1位。

上のグラフは、循環器疾患での月別死亡者数で、冬に大きく増加しているのがわかります。

伊香賀俊治 先生

慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科教授。
早稲田大学大学院修了、工学博士。
東京大学助教授、日建設計環境計画室長を経て、
2006年から現職、現在に至る。
建築・都市の環境マネジメントの第一人者です。

Premium住宅で採用するサッシメーカーYKKAP(株)からの引用です。

快適室温は18℃以上。イギリスでは21℃以上と法律で決められています。

「寒い」と感じる部屋は、健康リスクのある部屋です。

家の寒さは、肺を冷やし、血圧を上昇させるそうです。すると病気への抵抗力が下がり、肺感染症のリスクが増大。血液はドロドロになり動脈硬化を引き起こす可能性もあるとのこと。それぞれ、肺炎、心筋梗塞など死亡リスクのある危険な症状です。

その体の不調は寒さが原因かもしれません!?

暖かい家には健康にいいことがたくさんあります。

この調査では、高断熱住宅に転居した多くの人が、健康面での変化を感じている結果が表れたそうです。家の暖かさのほか、結露現象によるカビ・ダニの発生改善、暖房方式、換気システムの改善による空気の清浄化など、複合的な効果によるものと考えられます。

家全体を均一に暖かくします

断熱性能の高い家なら高血圧が改善するかもしれません。

高断熱モデル住宅での体験宿泊(12日間)と自宅で、起床時の心拍数を比較した結果、暖かなモデル住宅では起床直後の急激な心拍数上昇が生じずに、
入浴時も同様の結果でした(70代男性の結果)。寝室の床表面温度は、自宅=7.2℃、モデル住宅=21.0℃の違いがあります。

断熱性能の低い家は、夏の暑さも過酷です。

家の中での熱中症。特に高齢者は注意して下さい!

熱中症は屋外でかかるものというイメージがありますが、グラフからもわかるように、住宅などの居住施設で最も多く発生しています。年齢別では65歳以上が約7割を占めます。住宅内での熱中症は、65歳以上になれば、みんな注意が必要です。

暑さ寒さが無くなれば、体が動き出す。

家族みんなが健康で長生きできる家にしましょう。

(出典:Leiv Sandvic et al., “Physical Fitness as a Predictor of Mortality Among Healthy, Middle-Aged Norwegian Men,” The NewEngland Journal of Medicine , Vol.328, pp.533-537, 1993.2)

身体活動と心血管起因の累積死亡率を調査したもの。最も不活発な群は、最も活発な群に比べ死亡率が約3倍!

日本の家はなぜ寒い?

日本には断熱(内外の熱の出入りの遮断)の考えがなく、冬に寒いのは当然と我慢して住んできたからです

早稲田大学の田辺新一教授
早稲田大学の田辺新一教授

家庭1世帯あたりの年間エネルギー消費量を国別に比較した資料を見ると、暖房用は欧米諸国が日本の4~6倍、韓国も2倍以上使っていることがわかります。

家全体を冬中暖める欧米と、コタツなどで暖を取る日本の違いのほか、寒さは我慢するしかないと思っている人が多いのです。

近畿大学建築学部長の岩前篤氏
近畿大学建築学部長の岩前篤氏

日本の家の暖房は省エネ以前の段階です。もっと暖めた方がいい。

住宅技術評論家の南雄三氏
住宅技術評論家の南雄三氏

欧米と違い、日本の家は暖房費に削減の余地がなく、コスト回収できないので特に既存住宅で断熱が進まないのです。

住環境計画研究所(東京・千代田)会長の中上英俊氏
住環境計画研究所(東京・千代田)会長の中上英俊氏

吉田兼好の『徒然草』の有名な一節「家の作りようは、夏をむねとすべし。冬は、いかなる所にも住まる」の影響を指摘した。「アフリカで進化した人間は暑さより寒さに弱い。家はまず冬を旨とすべきです」。しかし、日本では建築関係者にも「夏旨」を信奉し、断熱を嫌う人が少なくない。

前真之東大准教授
前真之東大准教授

外気温が下がる冬季は疾患などで高齢者の死亡が増えるが、外気温低下と自宅死亡率の相関関係は西日本で高く、北海道は最も低かった。その理由は「家の断熱性能が低い地域は室温も下がり、高齢者の体に悪影響が及ぶのに対し、断熱化が進んだ北海道では室温が維持されるためと考えられます。

北海道大学 羽山広文教授
北海道大学 羽山広文教授

便益が光熱費削減だけでは回収が長期になりますが、健康が保たれて払わずに済む医療費や介護費を便益に加えれば、数年で元がとれます。

慶応大学 伊香賀俊治教授
慶応大学 伊香賀俊治教授

日本では快適で健康に暮らすという本来の目的より、省エネの視点で評価されることが多い。ただ、暖房利用が少ない日本では、断熱を普及させても省エネ効果は限られるため、行政の推進力はあまり強くない。

早稲田大学の田辺新一教授
早稲田大学の田辺新一教授

2013年改正の住宅の省エネ基準は、断熱の水準を1999年基準のまま据え置き、省エネの重点分野を断熱から給湯など設備機器の性能にシフトした。新築住宅への省エネ基準の義務化も、「工務店の半数以上は99年基準の家を建てた経験がない。」

前真之東大准教授
前真之東大准教授

行政の規制が弱く、取り組みに消極的な業界関係者も少なくないため、断熱性能を高めた快適な家に住めるかどうかは「消費者の意識次第」

北海道大学 羽山広文教授
北海道大学 羽山広文教授

他の先進国並みの高気密高断熱住宅は普通に造れる

断熱×気密×換気×遮熱

日本の気候は他の先進国の気候とは大きく異なります。高温多湿の夏と低温低湿の冬がある東京圏はある意味過酷な環境です。東京圏では夏の暑さ対策が、冬の寒さ対策と同様に大切になってきます。他の先進国は冬の寒さ対策だけすればいいのとは異なり、ただ断熱材を厚くして高断熱化を図るだけだと、とんでもない夏を迎えることになってしまいます。

「家が結露しない」住環境造りが一つの目安になります。Premium住宅で採用している「窓×断熱材×気密性能×換気設備×遮熱対策」なら他の先進国に匹敵する省エネ性能を発揮します。そう、他の家とは異次元の性能です。能力的には40坪くらいの家なら8帖用エアコン一台で家全体を空調出来るぐらいの性能です。

Premium住宅とハウスメーカー最高性能の家の比較

合計欄の 13,710kWh年を面積で割ると、 119.5292066kWh/㎡年 と計算できます。以下同様です。
また、「この住宅の必要エネルギー」の下に「次世代省エネルギー基準」とあって、こちらは同じ設備機器を使用したとき、外皮性能(断熱性能)を次世代省エネ基準としたらどれぐらい必要エネルギーがいるかを示したグラフです。Premium住宅は、13,710kWh/㎡年なのに対し、次世代省エネルギー基準の家(ハウスメーカーの最高性能の家)は228.8×114.70=26,243kWh年もエネルギーが必要になります。12,533kWh年もの差です。ほぼ半分!

次世代省エネルギー基準:1999年3月に、建設省により改正された日本の断熱化基準の通称です。2001年にスタートした「住宅性能表示制度」でも、温熱環境分野の中で、この「次世代省エネ基準」が参考ランク(等級4)に位置づけられています。
2020年以降は次世代省エネルギー基準が最低基準として義務化される予定です。税制優遇などの最低基準としても指定されることが多いため、住宅の資産価値を鑑みると最低でも超えておきたい基準値です。

普通に建てる家

Premium住宅との差は、36,739-13,710=23,029kWh年と桁違いの開きがあります。日本で普通に建ててしまう家が世界で笑われてしまうのが分かります。